万が一の時に受け取れるお金
病気や事故等で配偶者(夫)が死亡した場合に、どのようなお金が入ってくるのでしょうか?年金額が減っても、生活費はそれほど減らず、収支のバランスが崩れます。今回はそのような状況となった時に支払われる遺族年金と未支給年金について確認してみます。
遺族年金の受給
遺族年金には、遺族基礎年金と遺族厚生年金があります。ともに「その方によって生計を維持されていた遺族が受けることができる年金」です。生計を同一(同居、別居でも仕送りしている)にし、前年の収入が850万円未満(または所得が655万5千円未満)の方が該当します。ただし、死亡当時に年収850万円以上であっても、おおむね5年以内に年収が850万円未満となると認められる事由(退職または廃業など)がある場合は、受け取ることができます。
【遺族基礎年金】生計を維持されていた「子のある配偶者」または「子」が受給することができます。「子」とは18歳になった年度の3月31日までにある方、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある方です。子のある配偶者の場合の金額は、777,800円+子の加算額(1人目、2人目各223,800円、3人目以降各74,600円)。
【遺族厚生年金】生計を維持されていた遺族(妻、子、夫、父母、孫、祖父母:年齢など詳細条件あり)が受給することができます。夫の死亡時に30歳未満で子のない妻は5年間の有期給付です。遺族厚生年金の額は、死亡した方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額となります。死亡した方の老齢厚生年金を繰り下げていても、遺族年金支給額は増えません。
【中高齢寡婦加算】妻が受け取る遺族厚生年金には、40歳から65歳になるまでの間、583,400 円の増額があります。該当するのは、夫が死亡したときに40歳以上で子(18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していない子のない、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の障害の状態にある子)のない妻、あるいは子のある妻で遺族基礎年金の支給が終了した時に40歳以上の場合です。
妻が65歳になった時の遺族厚生年金
妻が65歳になり、自身の老齢厚生年金を受給できるようになると、その老齢厚生年金を全額受給するようになります。遺族厚生年金として受給できるのは、遺族厚生年金が自身の老齢厚生年金を超えた分です。自身の老齢厚生年金が遺族厚生年金よりも高い場合には、遺族厚生年金を受け取ることはできません。
遺族厚生年金の額は下記のうち高いほうです。
① 配偶者の老齢厚生年金の報酬比例部分の3/4
② 配偶者の老齢厚生年金の報酬比例部分の1/2 +本人の老齢厚生年金の1/2
未支給年金がある場合
未支給年金とは、年金を受けている方が死亡したときにまだ受け取っていない年金や、死亡日より後に振込みされた年金のうち、死亡した月分までの年金について、その方と生計を同じくしていた遺族が受け取ることができる給付です。
また、70歳未満の繰り下げ待機中に死亡した場合、遺族が請求すれば、65歳から亡くなった日までの年金が未支給年金として、遺族に支払われます。この年金の金額は割り増しなしの65歳時点での支給額となります。繰り下げ受給の申し出を行い、受給を開始すると、それ以前にさかのぼっての一括受領はできなくなります。
70歳を超えて繰り下げする場合は、5年という年金の時効についての注意が必要です。75歳までの繰り下げ延長に伴い、令和5年4月1日施行の特例もできています。年金を受け取る権利が発生してから5年経過後に、繰下げ受給の申出を行わず老齢基礎(厚生)年金をさかのぼって受け取ることを選択した場合は、請求の5年前に繰下げ受給の申出があったものとみなして増額された年金を一括で受け取る(例:72歳時の申し出だと、67歳以降の5年分を65歳から67歳で増額した+16.8%で一括支給)ことができます。また、その後も67歳まで増額した年金をもらい続けることができます。
まとめ
生計を維持されていれば、妻65歳まで遺族厚生年金(報酬比例部分の3/4)がもらえる。かつ子供が高3までなら、遺族基礎年金777,800円+子の加算額(1人目、2人目各223,800円、3人目以降各74,600円)が追加。高校を卒業していたら、中高齢寡婦加算で583,400 円が追加となる。
65歳を超して妻自身の老齢厚生年金が出ると、遺族厚生年金はその分減る。減る前の遺族厚生年金額は夫の厚生年金報酬比例部分の3/4か、夫厚生年金報酬比例部分と自身の老齢厚生年金を足して1/2にした高いほうとなる。
夫死亡同時に年収850万円を超えていても、おおむね5年以内に850万円以下になるなら遺族厚生年金の対象となる。
年金の繰り下げをしていても、受給開始するまでは過去5年分の一括受領が可能。その時点の健康状態によっては、こちらの選択もあり。